桂枝雀落語ライブ 13

『天神山』 36:19 下座 三味線かつら枝代
三味線かつら益美
桂米輔
鳴物桂米平

『壺算』 33:06 下座 三味線森垣と実
桂喜丸
鳴物桂雀松
解説=小佐田定雄(落語作家)

◇らいぶ・うらばなし

『天神山』

 狐と人間が結婚するという物語は「葛の葉伝説」が代表的です。「葛の葉の子別れ」といえば文楽や歌舞伎でもなじみ深いだしものになっています。その落語バージョンがこの噺です。
 噺の舞台となる一心寺や安居の天神さんは実在の場所です。現に、枝雀さんも一九九三年と九四年、一心寺の隣にある一心寺シアターという劇場でお芝居をしていますし、道をはさんで北側にある安居天神は大阪夏の陣で真田幸村が討ち死にした所と伝えられています。
 一心寺では、小糸さんのお墓こそありませんが、力士や芸人さんのお墓はたくさんあります。芸人さんも落語家だけでなく歌舞伎や文楽の人達も顔を並べておりますので、ヘンチキの源助さんのように墓見に行ってみられたらいかがでしょうか。ただし、うかつな墓を供養して、むさくるしい落語家なんぞがあいさつに来ても当方は責任を負いかねますのでご注意ください。
 噺の途中で主人公がヘンチキの源助からとなりの住人の胴乱の保兵衛に交代します。その保兵衛と狐をつかまえに来た男の会話や、狐の兄弟の話、狐を抱いての「ぬくいなあ」という一言などは動物愛護協会から表彰されそうないい話になっています。おおげさな言い方ですが、
「人間てええもんやな」
と思わせる名場面だと思います。

(平成6年10月2日 大阪サンケイホールにて収録)

◇らいぶ・うらばなし

『壺算』

 瀬戸物町の夏祭り…「瀬戸物祭」は毎年七月二十二日から二十六日まで開かれます。大阪中央区の坐摩神社境内にある陶器神社が祭礼の中心になっており、噺の中でも徳さんが紹介しておられるように、菊人形の代わりに陶器を飾りつけた瀬戸物人形や、瀬戸物のおみこしも展示されます。ただし、このおみこしは重すぎてかつぐことは不可能なのだそうです。
 壺の大きさをあらわすのに「一荷入《いっかい》り」と「二荷入《にかい》り」という言葉がでてきます。天秤棒で一度に運べる桶二杯分の水が入る壺が一荷入り、その倍の桶四杯分の水が入る壺を二荷入りというのです。
 昔の長屋の台所というのは、水壺と流しとへっつい(かまど)しかありませんでした。現代のシステムキッチンとはえらいちがいですな。今の台所にないのは、そうですね、神棚ぐらいでしょうか。この噺にも「三宝さんの棚」というのが出てきます。「三宝さん」というのは、三宝荒神のことで、仏と法と僧という三つの宝を護る神様です。かまどの神様ということで、台所にお祭りするならわしとなっていました。この噺では、その棚に布袋様の像を祭っていたことになります。
 これからシステムキッチンをこしらえる予定をお持ちの方は、ぜひとも設計図の片隅に「三宝さんの棚」というのを描き加えておいてほしいものです。

(平成6年6月30日 鈴本演芸場にて収録)

桂枝雀落語らいぶ

Last modified: Fri Jun 14 14:52:29 2002